Running〜Ritsuka SINGLES BEST〜

Ritsuka Tachibana Single Best Album発売記念!橘リツカ・独占インタビュー

橘リツカ・写真1

シンガー&コンポーザーとして活動する橘リツカ。精力的に制作・歌唱活動を続け、満を持して2016年12月17日にポニーキャニオンショッピングクラブでの独占先行発売が決定したシングルベストアルバム。今回はそれを記念して、彼女が音楽を志したきっかけから、シンガー&コンポーザーとして活動する際の信念、今回のアルバムに込めた思いなどを熱く語ってもらった。

取材・文:佐川直輝 撮影:青木大空
――はじめにシングルベスト発売決定おめでとうございます。
ありがとうございます。
――早速ですが、橘さんが歌を通した活動をするに至ったきっかけを教えてください。
橘リツカ(以降、リツカ):音楽・歌が昔から大好きだったのですが、あまりちゃんとはやってこなかったんです。ピアノを3歳くらいのときに3年か4年習って、あっという間に辞めて…。楽譜が苦手だったんですよ。あと、先生が厳しくて(笑)でも、音楽はずっと大好きでしたし、ピアノそのものも好きでした。タイミングが無くて、しばらく「音楽」はやれてなかったのですが、たまたま大学生になってからニコニコ動画という存在を知って、「歌ってみた」「演奏してみた」といった動画を見たんです。ちなみに一番初めに見たのは、(今回、アルバムにも参加されている)事務員Gさんの動画でした。一人で色々な楽器を使って演奏されていて、とても驚きつつも、感動しました。その後もいろいろな方々の動画を見ていく中で「こんな楽しいことに、誰でも参加できるんだ」ということで、好奇心で始めてみたって感じです。
――そこで、いきなり300万再生を記録するということになるわけですが。
リツカ:ニコニコ動画に動画をあげてから半年くらい経ったときですかね。最初は100再生とか、そんな感じだったんですけど、『歪みの国のアリス』の動画をたくさんの方が見てくださったり、事務員Gさんが演奏された動画に合わせて歌わせていただいたりして。その後に『炉心融解』を歌わせていただきました。確か、再生数が伸びたのはお正月くらいだったと思うんですけど、その時は動画アップして、「もうお休みだ!」って神戸に遊びに行ってました。ホテルにパソコンを持って行っていて、そういえばアップしたのどうなったかなって見てみたら、(再生数が)見たこともない数字になっていて、ランキングにも入っていて!これはなんだろう……って。思わず、そっとパソコンを閉じちゃいました(笑)
――そこが大きなターニングポイントになったわけですね。そこからどんどんと動画をあげて、再生数も伸びていって。
リツカ:歌わせていただいた楽曲の良さ・人気があってこそだとは思うんです。最初のころから40mさんや、Deco*27さんの曲が好きで、好きな作曲家さんの楽曲がリリースされると、それを歌わせていただくということ繰り返していたんですよね。そうしたら、ご本人にリツイートしていただけたり、たくさんの方に見てもらえるようになって。
――個人的には楽曲の力と橘さんの歌唱力の両輪があったからこそ、再生数が伸びたんだと思います。
リツカ:ありがとうございます(照)。
――そんな人気絶頂の中、「歌い手」から「シンガー&コンポーザー」としての道を選ぶわけですが。どういったことがきっかけだったのでしょうか?
リツカ:ピアノを習っていた時から、どこかでなんとなく「曲を作りたい」という思いはあったんです。
「歌」って、音楽の入り口として入りやすいじゃないですか。どこでも、誰でも歌うことはできますし。もともと歌うことは大好きだったので、まずはそこから音楽活動をスタートしたというところはあります。でも、いずれ曲をオリジナルでつくっていきたいという夢はもっていました。そんな中、Quee Queeというユニットを組ませていただいたときに、DTMとか、より作曲の専門的な部分に触れて、横で見たりするところから、その道を歩み始めたといった感じですね。
――その活動の中で、ついに実現した「ベストアルバム」ですが、この発売に至った経緯を教えてください。
リツカ:歌い手からオリジナル楽曲のコンポーザーを目指そうと思ったあたりから、なんとなく打ち込みを始めて、曲をぽちぽち作り始めました。その後ユニットを組ませていただいてから、「blue bird」や、「千夜彗星」などの楽曲を作ってアルバムをリリースさせていただいたら、とてもリスナーさんがほめてくださって。そこで「これは頑張ってみよう」って思ったんです。その後に商業でアルバムをリリースする機会をいただけて、フルアルバムの『プラネット・ジャーニー』をリリースしました。考えられないくらい豪華な方々に手伝っていただいて、本当に嬉しかったです。今でもプラネット・ジャーニーのリリースから3周年だね!とリスナーの方から言っていただけると幸せな気持ちになります。
でも、「もっともっと良い作品をつくりたい、スキルアップしたい」と思って、自分で出来る範囲で、どんどん曲を作って世に出していこうと決めました。それもYouTubeにアップロードしていくだけではなくて、きちんとした「作品」として作って、iTunesとかAmazonで配信して、また作って…ということを繰り返しました。ただ、いずれはこれをまとめたアルバムをつくろうというのは頭にあったんです。
――配信する段階で、すでに決めていたんですね。
リツカ:そうなんです。そして、それを出すときは「商業で」というところも決めていたんです。自分で配信するときには自分で1から作って、っていうことで良かったんですけど、きちんと外に発表する機会をいただけたら、曲を全部しっかりと生音で組んで、世に送り出せる質のものまで高めて出したいという思いもあったんです。そんな中で、こういった機会をいただけたので、今回の形になったという感じです。
――なるほど。では続いて、今回発表するアルバムに、どのような思いを込めたのかというところをお聞かせいただきたいと思います。
リツカ:大きなコンセプト・テーマとして置いているのは「前に進んでいこう」というメッセージなんです。人が生きていくための「希望」は、常に「前」にあるものなので。もちろん、自分がこの度シングルベストをリリースさせていただくにあたって、走り出そうという気持ちもありますけど、今わたしが一番に気になっているのは「モノの価値」なんです。
――モノの価値、ですか。
橘リツカ・写真2
リツカ:はい。特に「データ」というものの価値が難しいと考えていて。YouTubeなども無料で見られるものがあったり、サブスクリプションで聴き放題・見放題という世の中になってきている中で、作品そのものの価値って一体どこにあるんだろうということがすごく気になっているんです。作品を作るときに、何かのおまけでいいのか、そういうところも含めて「価値」をどこに置くのかということが今、私の中でホットなんです。人によってもちろん、それは様々だと思います。ブランド物だから「価値がある」とか、おいしいものだから「価値がある」とか。で、今回アルバムを出すときにもなにか「価値」を持たせたいと。それを考えた時に、その価値は「だれかの役に立つこと」であってほしいと思ったんです。その作品を聞いた人とか手にとってくださった方に、もし今後仮にそれが音楽と関係のないところであったとしても、それから得たものによって、その人の前に進むための力になったり、背中を押してあげられるような、そういったものにしたいと思ったんです。  私が今後も音楽をやっていく上で、たぶんずっと根底にもっていきたい「価値」がまさにそれで、その人が前進するための後押しをするような力であったり、メッセージであったりというものを発信できるようなものを常に作っていくことが私にとってのゴールを達成している状態というか、そういう思いを大切に作っていきたいと思っています。
――続いて、今回のアルバムの制作についてお話を進めていきたいと思います。今回は先ほどのお話の中にもありましたように、今回のアルバムではほとんどの曲を生音を取り入れて再収録することになったわけですが、なぜこのタイミングで再収録することにしたのでしょうか?
リツカ:今、私のことを知ってくださっている方のほとんどがやっぱり「歌い手」というイメージが強くて。その中で、いつもラジオを聞きに来てくださっている方々が、橘リツカがオリジナルをやっていることを知っていらっしゃるという状況だと思うんです。で、そういった方々は、今回のアルバムを楽しみにしてくださっていて。でも、そのリスナーさんはすでに(配信などを介して)もう音源を持ってらっしゃると思うので、単純に同じものをお届けするわけにはいかないぞ、と。やっぱりちゃんとしたもの、これまで応援してくださった方々が喜んでくださるものを作りたかったというのが一つあります。もうひとつは、音楽制作ソフトの音源ももちろん良いのですけど、ギターは弾いたことないですし、ベースも弾いたことないですし、ドラムは……学校においてあるのを一回だけ遊びで叩いたことがあるってくらいで(笑)、若干弾けるとすればピアノくらい。他の楽器はもう全然分からないっていう感じなんですよね。見よう見まねで打ち込んでいるので、ベースラインとかプロの方が聞いたら驚いちゃうと思うんですよ。創意工夫に満ち溢れているというか(笑)。で、分からないから、とりあえずイイ感じに(音を)重ねよう、って感じで。「ここは二本の腕で弾いてるから」「五本の指で弾いてるから」とか意識して作られている方も多いと思うんですけど、私はいくらでも重ねちゃいます。でも、実際にプロの方にアレンジしていただいたり、『プラネット・ジャーニー』でギタリストさんが入ってくださったりしたときに、何とも言えない躍動感みたいなものがあって。伝わってくるものが全然違ったんです。  もちろん世界観を作りこむ、というところで私が打ち込みをして、拙いながらもその世界観ができました、という話もそれはそれで一生懸命やればいいと思うんですけど、実際に世に出す勢いのあるものを作ろうということになった場合はやっぱり生音で、というのが一つのキーになるんじゃないかなと思っていたので、今回のお話があって、絶対生音でやろうということで再収録することにしました。
――実際に生音でやろう、ということで再収録をされている真っ最中だと思うのですが、一回目に制作した時と「意識して変えた」といったことはありましたか?
リツカ:逆に「絶対変わっちゃう」んですよね。今回はアレンジ自体のベースはプロの作曲家の藤木さんにやっていただいているんですけど、自分以外の方の手が入れば、当たり前ですがどこか変わっていく。だから、私はむしろ「変わらない部分」担当というか。「こことここはおさえてほしいぞ」っていう部分だけお願いをして、あとはその世界観をまた作っていただくことになるので、「タメて、サビでバッ!っていく感じ」みたいなことは言うんですけど、あとはプロの方ですし、お任せします!って感じで。自分とはまた違った世界観ができるのを、私も楽しみに待っているって感じですね。
――そして、このアルバムの世界観を更に彩るのは、事務員Gさんやおさむらいさんといった豪華な演奏家の方々ですが。
リツカ:事務員Gさんは、動画の演奏に合わせて歌わせていただいたときに少しコミュニケーションさせていただいたのが初めてだったと思います。似顔絵も描かれるなんとも多才なで、実は一度色紙に描いてもらったことがあります(笑)。そういった形で、イベントでもご一緒したことはあるんですが、実際、お仕事とか演奏でご一緒したことはありませんでした。なので、正直夢だったといいますか、何かの機会に是非と思っていたので、今回お願いさせていただいたら、快くOKをくださいました。  おさむらいさんは、ギターのボカロメドレーを歌わせていただいたことがあって、その時に少しお話しをして、ミックスのこととか気にしてくださったのを覚えています。イベントでも1、2回お会いしたことはあります、という感じで、実際にお仕事をさせていただいたことはありませんでした。
 お二方とも、ギター・ピアノの音がすごく優しくて、何とも言えないロマンチックな感じがするんですよね。その音が本当に大好きで、今回お二人にお願いしたという感じです。
――では、続いて今回のアルバムの聞きどころについてお話を伺っていきたいと思います。まず、やはり今回のアルバムに収録される「新曲」については皆さんが気になっているところだと思います。今回の楽曲はどういったイメージで作られたんですか?
リツカ:馬がまっすぐ走る感じ(笑)
――もうちょっとください(笑)
リツカ:私、動物が好きなんです。最初は『青い鳥』という楽曲を制作して……あれは実際の鳥かというと微妙なところですけど、鳥はもともと大好きで。で、『うさぎ』も好きで(『はしれ、うさぎ』という楽曲で題材に)。あと『キリン』の曲…『Little』もあったりして。
――そうですね。
リツカ:まぁ、キリンも私の中では「馬」っていえば馬ですけど。
――キリンも馬なんですか?!(笑)
リツカ:馬っぽいじゃないですか、形が。首が長い馬っていうか(笑)
――同じくくりなんですね(笑)
橘リツカ・写真2
リツカ:そうなんです(笑)。で、その後の動物なにかなって考えていて、「馬」っていうのが候補であったんですよ。それで、今回「前に進んでいく」ということがテーマだったので、「走り出す」ような感じがするなと。人って勢いをつけて「よし行こう!」って駆けださないと前に進むのってすごい大変じゃないですか。もう歩きたくないなってなっちゃって。どちらかというと、誰かが後ろからパッと押してくれた方が前に進めると思うし、特に隣に人がいた方が「一緒に頑張ろう」って気持ちになるし、もっと速く走れるようになると思うんです。なので、「みんなで走ろう」っていうイメージは作る時からあって、「やっぱり馬だなぁ」っていうことになったんです(笑)。
――今回の「前に進む」というテーマにぴったりの楽曲になったと思います。
リツカ:曲のイメージとして「馬を走らせよう」っていうのは思っていたんです。神社とかで馬が走るのはお祓い的な意味もあると思うんですけど、前に進んでいく力強さみたいなものもすごくあって。で、ランニングしているときに聞きたくなるような楽曲というお話もあったので、そこに自分を投影してもらって、そういう前に進んでいく力とか、疾走感とかを感じてもらいたいなと思います。ただ、わ~と走るんじゃなくてしっかり走るというか、意を決して走るというか、そういうイメージですね。
――今回の楽曲を聞いて楽曲のタイトル・イメージをいただいて、『Running』という言葉にその思いを感じたんですよ。馬であれば『Gallop』という言葉を使うこともできたと思うんですが、あえて『Running』にしているのは、「人」が主人公だからなんだなと。
リツカ:まさにおっしゃる通りです。楽曲を通して、前に進んでいこうという気持ちをもってもらえたら嬉しいですね。
――新曲のお話もできたところで、他の楽曲についてもお話を伺えたらなと思うのですが。今作は新曲1曲を含む、合計10曲になったわけですが、この9曲を選んだ経緯はどのようなものだったのでしょう。
リツカ:自分でも思い入れのある曲はあるので、それは入れたいなと。あと、ラジオでよく歌うんですが、その時にリクエストをいただいた曲であったり。また、今回アンケートを実施させていただのですが、結果がもともと考えていた曲とかぶるものも多かったです。
――そうして今回、アンケートを通して決まった曲があったり、リツカさん自身の思い入れの強い曲もあったりと、いろいろな経緯で選ばれた曲が出揃ったわけですが、曲の順番というのはどのように決めていったのでしょうか?
リツカ:順番はやっぱり、相当試行錯誤しましたね。最初はパッと決めて「出来た~」と思っていたんですけど、その流れで聴いてみたら「これはだめだ」ってところがいろいろ出てきちゃって。一曲一曲、自分で聴きながら調整していきました。
――今回のアルバムは曲の幅が広いというところがそれを一層難しくさせてますよね。陰と陽がはっきりしている曲も多いですし。
リツカ:すごく難しかったですね。「ザ・フィロソフィー」みたいな曲と「ポップ&キュート」みたいな曲があって、結構はっきりとした境界線ができてしまう感じになっちゃうんですよ。なので、出来る限りスッと聞けて、あまり明暗が分かれないように工夫して並べていきました。
――是非、お買い求めいただいた皆さんにはそういった色遣いにも注目していただければと思います。さて、最後になりましたが、このシングルベストアルバムを待ち望んでくださっているファンの方々や、このホームページをご覧になっている方々へメッセージをお願いいたします。
リツカ:今回、このアルバムを出させていただけることになったのも、一重にこれまで聞いてくださった方々のおかげだと思っています。一人で引き籠って曲を作るというのは心が折れるんですけど、それをラジオだったり、iTunesやアマゾンで聴いてくださる方々が「リツカさんの曲が好き」とか、「新曲はまだですか」と応援してくださったので、音楽を続けられています。本当にありがとうございます。今回のアルバムには新曲も収録されていますので、そちらも楽しみにしていてください。10曲入っているので、もしかしたら「この曲は知っているけど、この曲は知らない」ということもあるかと思います。精力的に作った自信作ですので、ぜひ全曲聴いてくださいね!よろしくお願いします。
――本日はありがとうございました。
リツカ:ありがとうございました。